2004年11月29日
あのときの質問への回答
「どうして君はそういう方向に興味をもつようになったんだい?」「いったいどういう意味だ?」
「だって、生まれ育った場所にしたって、家庭にしたって君が芸術に興味をもつ要素なんて・・・・・・」
明らかな差別意識に基づいた侮蔑に怒りを感じた私は、そこで彼の言葉をさえぎった。血気盛んな頃であれば、その場で彼を殴り倒していただろうが、実際にやったことは、その質問には答えずに彼の子供じみた選民思想をなじる程度のことだ。それだけではどうも不満であったようで、2〜3日後、夢の中で彼の顔面に拳を叩き込んでいた。
しかし、確かに後天的な環境を性格形成の主因と考えている彼にしてみれば、下町の貧しい母子家庭に育った人間がなんで、美術やらに関して選民である自分と同等、もしくは彼を言い負かしかねないのかが不思議なのだろう。あの時、答えなかった代わりに、ここで回答してみよう。
こっちにしてみれば彼のように高尚なものだと思って、高踏を気取って味わっているわけではない。子供時代にわくわくしたものへの興味や関心と同等のものだと思っている。幼い頃に夢中になったものというのは、多分にいかがわしいものだ。例えばスコットランドの霧深い湖に現れる太古の恐竜の末裔であったり、南米の密林に巣くう蛇の猛毒についてかかれた文章と過剰な演出の挿絵であったり、南極大陸の中央に空いた巨大な穴の衛星写真であったりする。もしくはテレビ画面に映し出された怪しげなユダヤ人のスプーン曲げ、何かの機材の中で焼け焦げた銀色の宇宙人の死体とされるものがうつった事故現場写真、吐き出されたエクトプラズムだの、呼び出された悪霊だの悪魔だの。そんなものの延長に澁澤もいるし、クリシュナムルティもいるし、ノイマンやチューリング、フロイトもいる。構造主義も、シュルレアリスムも、タオイズムも、耽美主義も、新感覚派もだ。
私はワクワクする高揚感を味わいたいだけだ。その高揚感を求める気持ちが、様々なメディアにクモの巣のようなアンテナを張り巡らし、そこに引っかかったものに飛びかかるよう仕向けているだけだ。そんな行為に下賎な育ちも、母子家庭も関係あるまい? ようは単に好奇心が強いかどうか、それだけだろ?
投稿者 黒川鍵司 : 2004年11月29日 11:45
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.ashrization.com/x/admin/mt-tb.cgi/45
コメント
そういうのは本当に頭くるね。でも殴りたいほど怒るなんて珍しいね。よっぽどだったんだね。
ちょっと違うけど、私が小説書いてるって聞いた元クラスメイト(男)がさ、話聞きたいって言うから地元の飲み屋に仲良しつれてイヤイヤ出て行ったことがあって。
そしたら何か賞に応募したのかとか、どこで編集と知り合ったとか紹介してくれないかとか根掘り葉掘り聞かれてさ、でも大して君のことよく知らないし、まずは作品読ませてよっていったら、これから書くって言うの。でも頭の中では最高傑作だって。すんごい機嫌悪くなった。頭の中で最高傑作なのはどんなくそ作家でもそうなんだよ。まずはアホほど書いてからにしろって思って。私初めて戯曲書いたの幼稚園だからさ(笑)バカにしてんのかって。ちなみにその子中学のとき一回振ったから許してあげたけど。おほほ。
でも二度と会いません。
投稿者 慶 : 2004年11月29日 16:15
そこまでのシンパシーを感じていただいて本当にありがとうございます。ええ、本当に......。
えっと、あのー、そのー、う〜んと、怒らないでもらえますか?
あのですね......フィクションなんです。ごめんなさい!
ただ単に、こうなった理由を語るよりも、こう書いた方が読むほうも気持ちが入るだろうと思いまして。そこまで思っていただければ目論見は成功なのですが、なんと言いますか、罪悪感が残りますな。
投稿者 黒川鍵司 : 2004年11月29日 17:16
先日上野でマティス展を見に行って、その前は清澄白河まで
行ってピカソ展を。そのことを友人に言ったら、「高尚な趣味をお持ちですわね。」と褒めてくれました。こっちは死ぬまでの暇つぶしに色んなものを見て、いろいろ感じて人生を楽しみたいと思っているだけなのに…。
普段しないことをしてみたら思いがけず褒められて得しちゃったみたいです。楽天的な私は幸せなんでしょう。
それとちょっとだけ罪悪感w
ってかフィクションなんですかw
ちょろっと感慨にふけった私って素直過ぎなのかもw
投稿者 策 : 2004年11月29日 22:54
お、おぬしー!!はかったなー!
てか感慨にふけるどころか自分のことまで書いちゃいました。てへ☆
投稿者 慶 : 2004年11月29日 23:55
>策さん
お久しぶりです。清澄白河は東京都現代美術館ですよね。懐かしいなぁ、昔は歩いていったものです。シンディー・シャーマンはあそこで見たのでした。
やっぱりフィクションって書かれちゃうとショックですかね。あまりにも慶さんが思い入れしてらっしゃるので悪い気がしてきましてばらしてしまいました。あの「火垂るの墓」も原作者の野坂昭如さんが「全部ウソ」といったときに、すごくブーイングを受けてましたね。単なる現実よりも、できすぎたうそ方が読みやすいでしょ?
>慶さん
いや、ほんとに申し訳ない。でも、思ったことをダラダラ書いた文章よりも、こう書いた文章の方が、読みやすいと思いません? こんな内容ただ書いたら「ああ、そうですか。はいはい。」で終わりでしょう。演出であります。そういうことでお許しあれ。
投稿者 黒川鍵司 : 2004年11月30日 09:20

コメントする