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2005年11月22日
STAX SRS-2020 Basic System II

素晴らしい。
まず浮かんだのがその言葉である。広い音場、しっかりとした定位感、澄み切った音。音楽性の豊かさでは、私が所有するヘッドホンの中でトップレベルだろう。久しぶりに音楽をずっと聞きつづけたいという気持ちにさせてくれた。こんな気持ちになったのはCD5400とHD580を購入したとき以来だ。これでスタックスでは入門用とされているのだから恐ろしい。
このように素晴らしいヘッドホンシステムをなかなか購入に踏み切れなかった理由は二つある。
- コンデンサー型であるということ
これまでのダイナミック型と違い、一般的なヘッドホンジャックには接続できず、専用のドライバ(一種のアンプ)が必要である。そのため割高感がある。また、機械的な繊細さがあるので、ダイナミック型に比べて丁寧に扱い必要があるとされている。 - 視聴レベルでは周囲の音で実力が発揮できない
発音部を光にすかしてみると構造上当然なのだが、完全に透けて見える。ダイナミック型のようにダイアフラムの裏にボイスコイルなどの構造物がまったく存在せず、膜だけがあるという具合である。つまり、まったく遮音性がない。そのため、どこで視聴をしても音が薄いという印象を抱かざるをえなかった。
そういうわけで、まずは入門用のSRS-2020を購入してみたわけだ。
まず、外見は良くない。装着した姿を見た友人が「ヘリのパイロットみたいだ」と言ったくらいで「洗練」からは程遠い。色が黒なので、SR-404やSR-303に比べると、まだオーディオ的といえるだろうか。
すっぽりと耳を覆うイヤーパッドは、肌触り良いのだが、多少蒸れる。また、本体とは両面テープで接着されているようなのだが、使用していると、これが多少浮いてくる。これについてSTAXに問い合わせたところ下記のようなご返答をいただいた。
イヤーパッドは手縫いですが比較的強力な両面テープを採用しております。しかし、肝心な接着部分も三次元形状になってしまうため周囲が浮き上がりやすいので苦慮しております。時々手で強く抑えてやるとくっ付きますが、また浮いてくる可能性がこざいます。なお、このご返答は即日いただいた。企業としての誠実さが感じられる対応だと思う。
更に強力なテープや接着剤で固定すれば浮き上がることは解消されますが、消耗品でありますイヤーパッドの交換が困難になってしまいます。このためお客様には、多少の浮き上がりは目を瞑って頂いて ご理解をお願いしている次第です。 申し訳ございません。
サービス課までお送りして頂けましたら、剥がれない様に固定させて頂くこともできます。
上述のとおり遮音性はなきに等しい。当然のように音漏れもかなりする。そして、構造上、GRADOと同様にイヤーカップの部分を手で抑えたりしてしまうと、音がこもってしまったりする。さらに強く抑えると、外耳と発音面の間の空気が、振動膜を押してしまい耳障りな雑音が発生してしまう。
このようにヘッドホンとしては扱いにくい部分があるわけだが、それを差し引いても冒頭の評価は変わらない。
澄み切った静寂感をたたえた音とでも言えばよいだろうか。情報量は多いが、滑らかで、広がりがよく、繊細。K501やER-6iと共通する部分もあるが、それらよりも表現力が高い。コンデンサー型への批判でよく言われる「低音が出ない」というのは正しい表現ではないと思う。むしろかなり低い音まで出ている。ただし、ダイナミック型で味わうような、外耳が震えるような低音というのは味わえない。そういう意味でロック向きでないとされるわけだが、そこにこだわらなければ、ロックであっても十分に魅力的に聴かせてくれる。もちろん相性という意味ではクラシックに軍配が上がる。特に弦の滑らかな表現には代えがたいものがある。声についても滑らかで伸びのある表現を感じる。似た傾向にあるK501では、声が遠い傾向を感じたのだが、こちらにはそれがなく、非常に自然である。また、音の立ち上がりが非常に良好なため、早いパッセージで引かれるアコースティックギターや、マリンバ、グロッケンシュピールなども気持ちよく楽しめる。
このシステムに付属するドライバ(アンプ)は非常に小型で、簡単に持ち運びできる。その上、動作時、もしくはボリュームを動かした際などのノイズがまったくない。このようなアンプがダイナミック型用にも存在していれば、入門用ヘッドホンアンプとして定番化するだろう。
仮にダイナミック型ヘッドホンとヘッドホンアンプを利用して、このSRS-2020並みの満足感を得ようとするのであれば、金額的にはゆうに6万を超えてしまうのではなかろうか。それほどのパフォーマンスを感じさせるシステムである。
なお、SRS-2020は生産完了となっている。後継機としてヘッドホンはそのままだが、高域の再生能力を向上させ、微小音量時のギャングエラー(当方の環境では感じられたことがない)を改善したドライバを付属するSRS-2050Aが発売される予定となっているという。当然、コストパフォーマンスの高さも受け継いでくれていると思うので、これもお勧めできるシステムだと信じている。
投稿者 黒川鍵司 : 2005年11月22日 16:39
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今まで、憬れても、どんなに憬れても買う事ができなかったSTAX
自社のコンデンサー型ヘッドホンを「イヤースピーカー」と呼ぶ、誇り高きメーカーだ... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年11月23日 06:53
» STAXな話 from soundrabbitの無駄話
久しぶりのレビューですね。これがこのblogの本分だったりするのですが、いつの間にか方向性が・・・(^^;)。
今回のは酩酊オーディオマニアで有名な(?)... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2006年6月 3日 12:59
コメント
とうとうSTAXまでいっちゃったんですね〜。
購入おめでとうございます!
STAXはいつかは僕も欲しいなあ・・・。
何気に僕が買ったばかりのHD580つながりで、リンク先の記事を読んでいると、物欲暴走前の黒川さんの面影が・・・(笑)
投稿者 ahtoh : 2005年11月22日 21:09
ここはためごろうさんのblogかと勘違いするほどに、ぞっこんですね(笑)。
最近は聞くことよりも作る方が楽しくて・・・冗談です。(^^
でも、聴くジャンルがSTAX方面ではないので、買う機会はまずないなぁと思う自分。
同じコンデンサーならノイマンのマイクが一本欲しいと思いますが。(^^;
投稿者 rabbitmoon : 2005年11月22日 21:43
>ahtohさん
お祝いの言葉をありがとうございます。
STAXというと一つの壁のように思っていたのですが、音楽を楽しむということに壁なんぞあるわけないということに気がつきましたよ。金額の壁はありますけどね(苦笑)。
実際買って聴いてみると、それくらい自然でした。
もちろん、HD580も良いです。好きですよ。DT770ProやMS-1も好きです。でも、完全に僕の中でのキャラクターがかぶったK501には旅立ってもらいました。こうして取捨選択が進むのかな。
>rabbitmoonさん
久々に音楽を聴くという楽しみを思い出させてくれましたね。それにコストパフォーマンスが本当に高いです。ぞっこんという訳ではないのですが、褒めざるを得ないという感じです。
所有してみて思いましたが、事前に言われていたほどジャンルを選ばない気がします。もちろん、向き不向きはありますが。PCと組み合わせてもいいんじゃないですかね。これならアンプをわざわざ別に買う必要ないし。静音対策はもちろん必要になるでしょうけど。
投稿者 黒川鍵司 : 2005年11月22日 23:22
レビュー、参考になります!
&ご購入おめでとうございました!
確かにどのジャンルも普通以上に鳴りますよね
弦やボーカルのツヤはやっぱり得意分野だとは思います
コンデンサー型の音に慣れると、ダイナミック型の音の持つ粗さが気になるようになりそうですね
実は私はSTAXを聴く以前から、最近気になりだしていました
ダイナミック型もあまり解像度を上げていくと、方式の特徴までわかってしまう気がします
今はまだ煩わしいと思う程ではありませんが、この先ちょっと不安ですねー(笑)
関連記事、例によってトラバさせていただきました
型番違いですが、ベーシック・シリーズということで!
投稿者 ためごろう : 2005年11月23日 07:06
お祝いの言葉、感謝いたします。
これで値段が7万円だったら褒めなかったと思うんですけども、4万円以下で、この音で音楽が聴けてしまうですから、褒めるしかなかったです。
ためごろうさんのブログで「パワー、厚味もあるのに軽やか」とご紹介されていたのは、まったく持って納得できますね。嫌味がなく、引っかかる部分を感じさせず音楽を聴かせるという気がします。
でも、きっと、ためごろうさんも同じだと思うんですが、ダイナミック型にも捨てがたいものがありますよね。なのでコンデンサー一辺倒ということにはなりそうにないです。
トラックバックもありがとうございます。実はしようと思っていたのですが、機種が違うしなぁと躊躇していました。こちらからもさせていただきますね。
投稿者 黒川鍵司 : 2005年11月23日 09:12
トラバ返し、ありがとうございます
機種違いは、この機種に関してはいいんじゃないかな?
もう既に、SRS-2050Aのアナウンスがあるわけですが、
そちらを検討されてる方にも、参考になると思います
STAXの、エントリー機種を強化して、もっとプッシュしていく方向は正解だと思います
エントリーモデルですら、充分に方式の違いによる恩恵が感じられる音ですからね
ダイナミック型の高級機を幾つも買うなら、
STAXひとつあった方が高次元でのバリエーションは確実に広がりますね
投稿者 ためごろう : 2005年11月23日 09:44
なんかSRS-2020を聴き始めてから、ダイナミック、コンデンサー、スピーカーという区別が僕の中で、更にあいまいになってきた気がします。音楽が聴きたいんであって機器に頑なにこだわる必要はあるのか? と。好きな音で聴ければよいじゃないかと。
でも、ダイナミック型、そしてスピーカーをいくつか聴いたからこそ、STAXを褒めてるんだろうなぁとも思うんですよね。
オーディオ知識と音楽を楽しむということのバランスをとるためには、やはりバリエーションの広さが重要なんだろうなぁと思いました。
ああ、なんだか全然まとまらない......。きっとブルース・リーなら「考えるな。感じるんだ」と言ってくれるんだろうなぁ。
投稿者 黒川鍵司 : 2005年11月23日 10:09

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