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2006年4月 1日
ヘッドホンバトン
すでに、ここにも書いたが、T.さんからのヘッドホン(というよりもカナルホンか?)バトンが回って来た。メーンはWestone Labs. のUM1で、あまり出回っているとは思えない機種であり、レビューもあまり見かけない。このような機種は、ある意味でレビューする人間への試金石となりそうなので、多少怖じ気づくところもあるが、レビューしてみたい。
今回、再生に使用した機器は、毎度おなじみの第4世代モノクロiPod40GBである。今回は屋外では使用せず、電源を供給しながら使用したことを付記しておく。
■Westone Labs. UM1
あまりデザイン性を感じる外見ではない。ER-6iやE3cなどに比べるといかにも業務用という気がする外見である。装着の仕方はSHURE方式とでも言うべき、外耳の周辺に上からくるりと回してつける方式。たしかにこの方式はタッチノイズを防ぐという意味では有効だ。装着感も、耳にすっぽりと収まるのでER-6iやThe Plugよりも良い。ケーブルは音質的な意味からなのか、それともタッチノイズへの対策なのか、左右の接合点から2本がツイストされている。長さは短めで、再生装置を鞄ではなく、ポケットなどにしまうことに対応している程度の長さにである。コネクタ部分はL字。今回は最初から付いて来たスポンジを使用したが、遮音性、音漏れ防止性はいうまでもなく十分。公共輸送機関での使用には全く問題のないレベルだ。また、能率もよく、ポータブル機でも十分に音が取れる。
さて、音質だが、まず感じられるのが重低音と呼ばれるような領域、いわゆるクラブ系打ち込み音楽などで強調される、サブウーハーが受け持ちそうな領域の音が、トリムされたようにカットされていることだ。全体としてカマボコの音バランスと感じられるのだが、この低域だけはスッパリとなくなっている印象である。ER-6iもその領域には強くないが、ここまでスッパリとカットはされていない。このカットお陰で、元々その領域が強調されいる音楽が聴きやすくなる。重低音がなくなったことによってメロディが浮かび上がってくるという具合なのだが、これは聴きやすいというだけであって、元々の曲に忠実という意味からは外れる。
高音域は、先ほど書いた通りのカマボコという音の特色から丸さを感じさせ、痛い音が全くない。これも聴きやすさに貢献しているが、金管楽器などは雲って聴こえることがあるし、女性ボーカルも滑舌が悪く聴こえることがある。カマボコではあるのだが、ところどころにへこみとピークがあるようで、そのため思わぬ音が浮き上がってくることがある。
音の定位感、音の距離感は非常に良く、ER-6iと比べても明らかに優れていると感じる。これは中音重視で、指向性の低い極低音をカットしているためだろう。その意味で音場はこのタイプとしては広めだと思うが、高域の丸まりのせいなのか、空気感とでもいうものは希薄で、迫力とか気配とか存在感というものはあまり感じられない。この点では、音の減衰表現などの繊細さなども含めER-6iの方が上手である。
耳に優しい音を出すイヤホンだとは思うが、かなり癖のある機種である。高域と極低域を強調した音楽を聴きやすくしたいというような用途のためには、非常に重宝しそうである。しかし、それは、その音楽の作り手の意図を反映させるということからは遠ざかるということを認識した上で行われるべきであろう。一本でなんでも聴こうという目的には適さないが、癖を利用するというレベルにある人にとっては良いイヤホンとなりそうだ。
■beyerdynamic DT231 Galactic
このヘッドホンはbeyerのiCansという気がする。両者とも自社のメーンの製品をミニチュア化したような製品であり、密閉型だが遮音性、音漏れ防止性は低い。そして、ドライバーの性能自体は高そうに感じる所まで似ている。
装着感に関しては、こちらの方が良い。イヤーパッドの径小さく耳のせ型の様になるが、パッドの触り心地が良いのでそれほど気にならない。長さの調整はHP-X122と同様な自動式だが、バネではなく、頭頂部のクッションになる部分にゴムを通している形である。この部分が動く際にはバネの音などはしないが、その代わりゴムがクッションの入り口と干渉し、ごそごそと音がする。歩行しながら使うと、この音がかなり気になるので、ポータブル機器との組み合わせは想定されていないのかもしれない。ケーブルがかなり長いこともそれを示唆している様に思う。ケーブルの取り回しについては、片出しで、一寸太めだが柔らかく問題はない。能率は少し悪く、HD25で使用する際よりも、2、3割iPodのボリュームを上げる必要があった。
音はよく出来ている。同一価格帯のヘッドホンに比べると音自体の立体感、実体感は頭2つくらいリードしていると言えそうだ。音の分離感も非常に良い。音作り自体は2万円クラスのヘッドホンが目指す所と同一のベクトルにある様に思える。4〜5千円のヘッドホンからステップアップした際には、そのあたりに驚かされるのではないかと思われる。
UM1とは対照的に低音域はかなり伸びるし、高音域も場合によっては刺激的でだが、それほど中域が沈んでいるようには感じない。iPodで利用している限りでは、全体として、おとなしい印象で、同一価格帯のヘッドホンでも地味に感じられるのではないかと思う。
定位についてだが、ネット上のレビューを見ると、良しとするレビューと、悪いとするレビュー双方が存在している。聴いてみると音の鳴る方向は非常に良く、先ほどの分離感とも関連して、どこにどの音があるかがよくわかる。しかし、音の遠近感がなく、傘の内側に書かれた絵を見ているような感覚に陥る。これが意見を分ける原因だろう。
HP-X122が5〜6千円台のヘッドホンの気配を感じさせるとすると、DT231は2万円台のヘッドホンの気配を感じさせると言えるだろう。1万円以下ではベストバイとされていたのがよくわかる気がした。
■audio-technica retro-face ATH-RE3
見た目は「RE」の名に違わずレトロ。それに喜ぶ人は良いが、全体的な安っぽさがあるのも事実である。重量も軽く、側圧もそれほどでなく、スポンジの当たり心地も悪くないので、装着感は良い。ケーブルは両出しで細く、断線が気になる。長さは短い。
音なのだが、高音よりのレンジの狭い音で、音の広がりも悪く、定位感も低い。レンジが狭くても、定位が悪くても、それなりに聴ければ良いのだが、全体的にうわずるし、高音のシャリつきがあるし、耳にいたいときがあるしと、とても長時間は聴いていられない。
このヘッドホンは何かの冗談なのだろうか? 今日(4月1日)という日付には似合っている気がするけれども。
■audio-technica ATH-CM3
気を取り直して、と行きたい所だが、同じオーディオテクニカなので何となく嫌な予感がする。
いわゆるイヤホンで、ケーブルは右が長く首の後ろにまわせるU字型。ケーブル全体の長さはかなり短く、屋外で利用する際にはなんらかの延長ケーブルが必要になる。おそらくMDやポータブルCDのリモコンの使用を見越した短さなのだろう。気になる点としては発音体とケーブルをつなぐ部分が金属製で妙に長いことで、もしかしたら何らかの音響効果を狙っているのかもしれないが、ほほに当たるときもあり気になる。
定位は完全に頭内で雑然としている。全体の傾向は若干高音よりに思え、低音は一段階高くされてしまう印象。中音は張り出しが結構あるのだが、どこかで膨らんだような、こもったような音になっている。なのに時たま高音を含め耳障りに感じる。全体としてイライラしてくるが、スポンジを使えば、もう一寸まともなバランスになるかもしれない。
■SONY MDR-E931LP
これもいわゆるイヤホンだが、先ほどのAHT-CM3にくらべると全体的に配慮を感じる。ケーブルは布巻きで絡みにくいし、肌に触れても優しさを感じる。またU字型の接合部分で右(長いケーブルの方)が左と逆向きにでているので、U字の部分が余っても自然に垂れてくれる。長さもプレイヤーをポケットに入れられるレベル。コネクタはL字である。
遮音性、音漏れ防止性はそれほど高いわけではなく、一般的なイヤホンと同様である。なので、公共輸送機関での使用時にはボリュームに十分注意したいところだ。
音だが、このタイプとしては広がりが良く、定位はやや曖昧だが、頭内にせせこましく音が置かれるということはない。こもりや妙なふくらみもなく、高音が耳障りということもない。低音は若干不足気味だが、ちゃんと出ている。スポンジなどを使って補えば問題のない程度ではないかと思える。
情報量が多いとか、定位感が抜群というわけではないが、全体としてバランスが非常に良い。外出先で気軽に音楽を楽しむには十分の機種と思える。
ちなみにうぃんさんに聴かせていただいたUSTバージョンについては、試聴時間が短かったし、環境もあまり良くなかったが、通常バージョンよりもさらに音の広がりが良かったことだけは認識出来たので、これは付記しておきたいと思う。
■感想
これだけ多くのレビューを一気に書いたのは初めてで、かなり疲れるものもあったが、装着に関する特色、そして音の違いには驚かされた。それぞれに作り手の考えが投影された結果なのだろうが、それによって同じ音楽の印象がガラッと変わってしまうこともありえることが実感できた。それだけでも、この試聴を行った意味があったと思える。
なお、今回聴いた中で最も推薦できるのはMDR-E931LPである。iPod付属ヘッドホンにくらべると2〜3段上手という気がする。MX400、500ともにイヤホン、ヘッドホンに興味を持った際の入り口として、ベストなものだと思った。
このような機会をあたえてくれたT.さん、そして私にまでバトンをまわしてくれたためごろうさん、moonrabbitさんに感謝したい。ありがとうございました。
投稿者 黒川鍵司 : 2006年4月 1日 19:38
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コメント
レビューお疲れ様です。
やはりUM1は独特な音なのですね。とても参考になります。
私はDT231 Galacticが、さりげなく良さそうだなぁという感じがしています(^^。
投稿者 ハル : 2006年4月 1日 21:29
レビューお疲れ様でした!
UM1の音の傾向がよくわかりました。
UM2はどうなのだろう?と気になってしまいますね^^
E931LPのレビューはまさにその通り!という感じですね。さすがです。
総合的に見るとMX500よりもバランスも音場も良いですし、さすがSonyといった感じですよね。
USTは音自体はE931LPと大差ない(価格ほどの差はない)と思います。
D231は興味あります。でも、外では使いにくいですし、室内では力不足に感じるかもしれませんね。
オーテクの2機種のレビューには笑わせていただきました^^;
投稿者 うぃん : 2006年4月 1日 23:59
お疲れ様でした。本当に疲れますよね。(^^
なかなか個性的なものばかりで、分かりやすいといえば分かりやすいですが、人に薦めるとなるとバランス形になってしまいますね。(^^;
あ、似非バーチカルごっこ、時間があったらやってみてください。(笑)
ゴーヤさんからブツが届きました。いいですね。(^^
投稿者 rabbitmoon : 2006年4月 2日 01:16
>ハルさん
DJ1pro入手出来たようで、おめでとうございます。
UM1はかなり特殊ですね。優しい音だけと、実はすごく癖が強い。特定の音楽を、ある方向に変化させたいというようなエゴイスティックな鑑賞法を行いたい人以外には勧められないと思います。
DT231はいいと思いますが、すでに2万円クラスのヘッドホンを持っている人には物足りないかもしれないです。
>うぃんさん
見事なスパイラルに感嘆しております。SR-325i楽しんで下さいね。
Sonyとは相性が悪いので(笑)、最後にまわしたのですが、これが意外と良かったという印象です。2万円以下のポータブルデジタルプレイヤーには価格のバランスからもベストなんじゃないですかね。見た目も許せるし。
テクニカの2機種はね......イヤホンの方はまあ、いいんですけど、ヘッドホンの方は「昔のヘッドホンってこんな音だったんだよぉ」「へー」ってネタのためだけのヘッドホンの気がしました。お金だして買ってたら「なめてんのか、コノヤロー!」とぶち切れていたでしょう。
>らびさん
お預かりしてからパラパラ使いつつ、金曜日の夜から土曜日午前に集中して試聴、午後にレビュー書き始めて、19時になってなんとか文章になったという具合です。気軽に使える機種が多かったので助かりました。2〜3万円台のヘッドホンを5本だったら1ヶ月はかかったでしょうね。
お、届きましたか。おめでとうございます。あれだと改造ってわけにはいきそうにないですね。
投稿者 黒川鍵司 : 2006年4月 2日 08:09
お疲れ様です。読ませていただきました。
辛口な感想ですが、概ね同意します。
同価格帯なら、やはりER6iの方が扱いやすそうですね。
というよりも、UM1はかなり癖が強いので、曲や環境との相性や、好みが合わないと扱い難いと思います。
視聴できるところも一箇所だけだし、他人に薦めるのは難しい機種ですねぇ。
投稿者 T. : 2006年4月 2日 21:23
以前、ためごろうさんから3つのイヤホンをお借りしたときと同様なのですが、お借りしているからには、きちんと書かなくてはという気持ちがありまして、それが突き放した書き方=辛口につながっているのかもしれません。
非常に難しいですね、UM1は。以前ここにも書いたとおり、オーディオ趣味というのはエゴイスティックなものだと思うのですね。オーディオ趣味としてはUM1はありだと思います。自分が好きなように聴くのは十分にありですから。しかし、レビューとして誰かに伝える文章となると上記のような書き方になってしまいます。書いていてジレンマすら感じますね。本当に難しいです、UM1は。
投稿者 黒川鍵司 : 2006年4月 3日 10:45
レビューお疲れさまでした!
お気持ち、とってもわかります!
私は特に普段自分が好きで気に入ったものしか記事にしていなかったので、
今回はなかなか記事にまとめることができませんでした・・・
とにかくUM1の基本性能は高いのですが、
もし、聴感上の周波数帯も基本性能とするなら、
評価は厳しいものにならざるを得ないのかもしれません
購入前にそれを理解した上で使用する、というのは、
試聴が限られた現状ではむずかしいでしょうし・・・
いくらiCansやDT231にクセがあるといっても、
UM1ほどではありませんからね・・・
とにかく今回は勉強させていただきました
投稿者 ためごろう : 2006年4月 3日 12:25
非常に難しいですね。「聴きやすい=良い」という式が成り立つかどうかという問題を突きつけられた気がします。
このレビューで良いと判断したMDR-E931LPだって「聴きやすい」には違いないんですよ。その差はなんなんだって言われたら音の違いだというわけですけど、そこに客観的な証拠はあるのか? といわれたら何も出せないし。
あ、そうそう。お返しする相談をしなくてはいけませんね。メールをお送りしますね。
投稿者 黒川鍵司 : 2006年4月 3日 18:31

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