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2007年12月24日
今日のことば
前年の春ごろから緑内障が悪化し、夏には全くの盲目になっていた。しかし、それを悲しんでいるような様子は一向にうかがえず、訪ねていったわたしに、いつものように焼酎を所望した。二五度の缶入り焼酎一個をコンビニで買ってきて渡すと、満面の笑みを浮かべつつ口に運ぶのだった。光を失った悲しみを一杯のアルコールで慰めることのできる不思議な感性の人であった。筒井功「サンカの真実 三角寛の虚構」(文芸春秋)253〜254ページ
入院してからも、始氏のものにこだわらない態度は変わらなかった。その四人部屋の患者はみな、こけた土色の顔と枯れた小枝のような腕の人たちばかりで、わたしには末期がんの専用病室ではないかと思えた。そんな中でも、始氏だけは奇妙に快活で、こちらの問いに肯定の返事をするとき、「はい」という場違いなほど大きな声が沈痛な室内に響きわたり、そのたびにわたしの方が声をひそめた。「余命三ヶ月」と聞いていたが、それは何かの間違いで、ただの栄養失調ではないだろうかと感じられることもあった。
始氏はしかし、その三分の一ほどしか生きのびることができなかった。死の数日前、昏睡に陥り、意識不明のまま逝ったという。葬儀というようなことは、とくに行われなかった。
投稿者 黒川鍵司 : 2007年12月24日 14:27
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