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2010年9月23日

今日のことば

 そして、前にも述べたことだが、人体模型の製作技術が江戸時代の見世物世界から継承されたものであったことも、展覧会と見世物との連続性を明らかにしている。
 観客の反応の一例を引けば、昭和十年に岡山市で開催された「警察博覧会」をみた六高生徒連は。その展示中とくに「妙齢婦人性病模型」に興味を持ったと記している。それはどんなものかというと、やや足を開いて椅子に座ったアデな姿のおネエさんの裳裾が開かれていて―でも、マッチは買わなくてもよいのだった。啓蒙のためだから、サービスなのである。
 僕らは博覧会は見たことは少ないんだがあまりに人気が高いので入つて見た、どの品もどの品も珍品ばかりだ、猟奇と興趣の伝道だナー、とくに僕達に興味をたぎらせしたものは警視庁医務課出品の「顔は美しいが性病を警戒」と云うあの美人の等身大人形だ、青春の情熱に燃える僕らもあいつを見ては興趣を越してむしろ気色悪かったよ、もう遊びになんかへは行けんと思つたよ、然しかく多数の豪華な出品中、僕達が最も気に入つたものがあるんだよ、それはフランス十字軍戦争時代に出征勇士が留守を守る愛妻の貞操を確保するために使用したと云う貞操帯だ、あいつは貞操観念が荒み行く?と称される現代の処女へ適用したらどんなものだかノー。
(『警民一如』)
 これと同様な人形は、昭和三十五年にエルスケンが撮影した「防犯と衛生展覧会」にも見ることができる。それは布団に横たわったあどけない顔つきの美少女で、そのあらわにされた股間は梅毒のかなり進んだ状況を示していた。
田中聡「衛生展覧会の欲望」(青弓社)134~136ページ

投稿者 黒川鍵司 : 2010年9月23日 19:06

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