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2010年10月24日

LINN IKEMI

ikemi.jpg
 IKEMIと書いて「アイケミ」と読む。その姉妹機はGENKI(ゲンキ)という。Styxの「ミスター・ロボット」がはやったころのプロダクトかとも思わせるが、1999年発売開始とあるから、そういうわけではないらしい。

 エソテリック SA-60に換えて、このCDプレイヤーを導入した理由は、すでに述べているが、SACDが数えるほどしかない状態でCD再生のグレードアップを考えたとき、単体のDACを購入するよりも、SA-60を下取りに出してCD専用プレイヤーを導入した方が現実的だと判断したことだ。さらにさかのぼって、なぜCD再生のグレードアップを考えたかといえば、GOLDMUND MIMESIS 21Dの自宅試聴にたどり着く。あの時味わった中~低域。どうやっても、私はあの中~低域をSA-60から出すことができなかった。

 アップグレードと考えたとき、最初に頭に浮かんだのはLUXMAN D-06だった。CDの再生音に不足感はなかったし、SACDも聴けてしまうプレイヤーであるのだが、ある一点でこのプレイヤーは却下となる。このプレイヤーはアナログ出力の完全バランス構成を売り物のひとつにしている。当然、RCAでつなぐよりもXLRで接続するべきだろうし、店頭での試聴でもXLR接続に軍配があがることが確認できた。しかし、このXLR出力は3番Hotなのだ。愛用のプリアンプとの接続を考えると面倒なことになるのが見えてしまったというわけだ。次に浮かんだのはNAGRAのCDP。これも文句のない音、そして外観。しかし、私には高価すぎる。中古で出回る可能性もかなり低い。

 そんな思案の最中、このIKEMIの中古が現れた。導入している人も多く、評価も高いプレイヤーだが、2世代くらい前のプレイヤーだし、LINNがCDプレイヤーの生産をやめたことなどもあってか、価格はかなり安くなっていた。音も私が求める方向へのグレードアップが望めるものだった。最後は例のA氏に「CelloにIKMEIってどうですかね?」と質問し、「うん、いいと思うよ」という回答を得て、晴れて導入とあいなった。

 ラックに設置するとき、筐体の小ささもさることながら、その軽さに驚かされた。SA-60の半分もない。スペック表を見るとSA-60は14kg程度、IKEMIは4kg程度。1/3以下だ。重さで音が決まるわけじゃないと思ってはいるが、さすがにここまで軽いと不安になる。ケーブル類をつなぎ音を出す。不安は消えた。MIMESIS 21Dが聴かせた、あのレベルの低域が戻ってきた。あの時、経験していなかったら「小学生高学年の女の子の腕のような華奢な造形」と評されたCHARISMA+CHARAから、こんな低音が出てくるなんて、信じられなかっただろう。

 そのスペックを見ていこう。この時代のLINNのプロダクトに共通の黒い箱の大きさは幅320mm、高さ80mm、奥行き326mm。重量は4.1kg。このコンパクトさのおかげで設置は恐ろしく楽だが、インシュレーターを使用する際には、その種類を選ばないと滑りやすい状態になってしまう。SACDに対応していないCD専用プレイヤーであることは、すでに述べたが、HDCDの再生に対応しており、再生時には、ディスプレイに「HDCD」と表示される(逆に再生しないと表示されない)。このディスプレイの可視性は良いとは言いがたいが、使用上問題がでるような部分はない。リモコンは、これはLINNの伝統ともいえなくもないだが、恐ろしく安っぽい。いまどきの液晶テレビのリモコンの方がよっぽど高級感があるといえるだろう。このリモコンはプレイヤーのみならず、アンプなども操作できるものとなっている。

 アナログ出力はRCAが2つ、XLRが1つ。どちらが有利かという話になるが、IKEMIのアナログ出力はバランス回路ではないようだし、マニュアルにも「長いケーブルを使う場合にはXLR」という程度のことしかかかれてないので、アンプ側の事情に合わせればよいだろう。ちなみにXLRは2番Hotとなっている。デジタル出力はBNCの同軸が1つ、AES/EBUが1つ、TOSが1つとトランスポートとして使用されることを前提としたような形になっている。そのほかにLINN独自のリモート接続用ジャックとSYNC用のRCAジャックがある。後者はLINN製のDACとの接続時にクロック同期を行うためのものらしいのだが、通常の外部クロックを受け付けるのかどうかは、今もって不明だ。電源についてだが、スイッチング電源を使用しているため、背面の切り替えスイッチを動かすだけで、そのままで多種多様な電圧に対応できる。通常、日本においてはスイッチは120Vにしておけばいいわけだが、昇圧による、もしくはオーディオ専用電源で200Vを使用できるという場合は、240V側に切り替えて使用すれば良い。ちなみに私はアイソレーショントランスから120Vで電源を供給している。

 音について、特徴的なのはそのピラミッド的なバランス。低~中域がしっかりしている。逆に言うと高域については、伸びを強調するものでもなければ、何か特徴的な、例えばキラキラと光るような艶とかいったものはなく、いわゆる「透明感」というのも希薄だ。それでいて、楽器の種類・数の多い音楽も、複雑なコーラスにおいても、各楽器の位置、声の分離などはよく、見通しが悪い、もしくは混濁しているという印象を抱かせない。これは中域に情報量を伴った抜けの良さがあるといっていいだろう。低域に関しては、既に書いたとおり、以前、MIMESIS 21Dが聴かせてくれた「耳ではなく、身体で感じる低音」の域まで再生してくれる。MIMESIS 21Dほどソリッドな低音というわけではないが、芯は十分感じられるし、むしろ神経質さを感じさせず、心地よいともいえる。また、この心地よさという感覚は、全域にわたった感覚で、これは全体としての滑らかさと重視された中域によるものだろう。CD再生でよく言われる「デジタル臭さ」がなく、IKEMIを「音楽性がある」と評する人、中には、ある機器を指して「IKEMIくらい歌ってくれればよいのに」と比較をする人があるのは、この滑らかさと中域の重視の傾向に惹かれるためだろう。何が何でも反応の速さを、もしくはダイナミックレンジの激しさを最重要視するという方でなければ、この音には多かれ少なかれ魅力を感じるのではないかと思う。

 前述したとおり、このCDプレイヤーは1999年発売開始ということだから、数世代前のCDプレイヤーということになる。それゆえ、現状、中古は国産の高級SACDプレイヤーの中堅機程度の金額で購入可能となっている。SACDというメディアが次世代を担うという可能性のなくなり、PC、もしくはメディア不在のデジタルオーディオへの移行が始まっている今、その特徴を気に入るのなら、IKEMIを最後のCDプレイヤーとして購入するのは「あり」な選択ではなかろうか。

投稿者 黒川鍵司 : 2010年10月24日 10:28

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コメント

ご無沙汰してます。

Ikemiの音について書かれている特徴は、Linnの音にある程度、共通して感じられますね。中庸の美学が感じられるIkemiはLinnのプロダクトの中でも特にLinnらしいプロダクトだったのかなという気がします。CD12よりも・・・

最近、50~70年代に録音したジャズやロックを美味しく鳴らしてくれる、セカンドSPを中古で物色中です。少し昔の機器の方が上記の音楽には心地よく、かつ何と言っても安いですしね。

投稿者 ゴーヤ : 2010年10月26日 12:46

 本当はLS3/5Aと組ませたかったりするのですが、それは贅沢すぎる気がしている黒川です(笑)。CD12は私には過ぎたものでして......あの金額を払うならNAGRAにいくことでしょうね。IKEMIというプレイヤーは良くも悪くもLINNの音というイメージを形作ったCDプレイヤーだったのかもしれませんね。そのメーカーがCDプレイヤーの生産をやめ、LP12もその方向に沿った進歩を遂げようとしているように感じられます。時の流れってやつですかねぇ。

 セカンドスピーカーとは、これまた不穏な! ゴーヤさんにはアルテックなんかとさり気なく使いこなしてほしいなぁなんて思ったりしますです。

投稿者 黒川鍵司 : 2010年10月27日 20:19

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